海外留学者からの手紙

Isala Hospital HPB center(オランダ)

オランダ・Isala Hospitalでの短期留学を終えて

96期の佐藤友美です。
この度、2024年12月にオランダ・ズウォレにあるIsala Hospitalにて、肝胆膵外科を中心とした1ヶ月間の臨床研修を行う機会をいただきましたので、ここにご報告いたします。

きっかけは、野路先生からいただいた短期留学のご案内メールでした。元来消極的な性格であり、上級医や同期に頼ってばかりであり、英語も全く自信がありませんでした。
しかし、メールの中の「英語に自信がない方も行くべきです。行くなら今です。幅広く見聞を広げるチャンスです。」という言葉に背中を押され、何か自分を変える契機になるのではと考え、思い切って留学を希望いたしました。

海外一人旅も未経験だったため、渡航先は「治安が良く、人がフレンドリーであること」を条件に相談したところ、野路先生のお知り合いであるDr. Sarah Gansが勤務されていたというご縁もあり、オランダのIsala Hospitalでの研修が実現しました(実際にはDr. Sarahは別施設へ異動されていたため、お会いできませんでしたが、留学前から多大なサポートをいただきました)。

ズウォレ(Zwolle)はオランダ東部に位置する歴史ある中規模都市で、アムステルダムから電車で約1時間の距離にあります。Isala Hospitalはベッド数約850床を有する市中総合病院であり、オランダ北東部の肝胆膵疾患における専門的治療拠点病院として、他地域から多くの紹介患者を受け入れています。研修を担当いただいたHPB(肝胆膵)センターは、年間多数の高度手術を行う国内有数のセンターであり、STZ(オランダにおけるトップクリニカルケア病院)にも認定されています。手術は週2〜3日実施され、1日あたり2〜3件のペースで行われていました。ロボット支援下腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術、腹腔鏡下膵体尾部切除術(DP)、腹腔鏡下肝切除術を中心に勉強させていただきました。
肝胆膵手術がない日には、上部・下部消化管の手術も見学させていただき、幅広く経験を積むことができました。基本的にはda Vinciのコンソールまたは術野の外から見学させていただくことが多かったのですが、スコピストや助手として参加させていただく機会もありました。手術以外にも、カンファレンスや病棟回診に参加しました。オランダ語が公用語であるため、カルテやカンファレンスの理解には苦労しましたが、図示や翻訳アプリを使っていただき、丁寧に説明いただけました。また、1日だけですが、オランダ北部のGroningen大学病院で肝移植手術の見学もさせていただきました。肝移植手術を実際に見学するのは初めての経験であり、今後の診療において非常に貴重な学びとなりました。

最も印象に残ったのは、手術時間の短さと効率の良さです。肝切やDPを複数件行っても、ほとんど定時で終わっており、オンコール以外は皆さん早めに帰宅されていました。中でも驚いたのは、手術中に執刀医含めてコーヒーブレイクや昼食休憩をとる文化です。メリハリのある柔軟な働き方が定着しており、医師のQOLが大きく向上している印象を受けました。また、女性外科医の割合も多く、出産・育児後も継続して外科医として活躍できる環境が整っていることを感じました。

術後入院期間も非常に短く、週1回の病棟回診に参加させていただきましたが、ほとんどの患者が入れ替わっているほどでした。合併症が他施設と比べても低いというIsala Hospitalの強みも背景にあると感じられ、医療制度・保険制度の違いもあわせて実感しました。

オランダでの研修を通じて、消化器外科Ⅱの手術の精密さと外科教育の質の高さも改めて実感しました。リンパ節郭清を含む細部の操作についてはオランダではあまり行われておらず、第二外科における丁寧で緻密な手技の高さを再認識する機会となりました。また、若手医師の腹腔鏡下胆嚢摘出術や腹腔鏡下虫垂切除術の執刀も見学しましたが、私のこれまでの経験を踏まえると、おそらく完遂できそうな状況であっても、指導医が途中で執刀を交代することが多い印象でした。こうした比較の中で、これまで北大および関連病院の先生方に受けてきた丁寧で手厚い指導のありがたさを、改めて痛感しました。

英語力の不足は私の大きな課題であり、医学用語であっても、一度では聞き取れず何度も確認したり、思うように意思が伝わらなかったりする場面が多く、悔しい思いをしました。しかし、英語が苦手な自分でも、現地で単身研修を完遂できたという経験は、自信と度胸を得る貴重な体験となりました。

休日にはアムステルダムまで足を延ばし、美術館巡りやクリスマスマーケットを楽しみました。特に、ゴッホの「ひまわり」やレンブラントの「夜警」など、教科書やテレビでしか見たことのなかった絵画を実際に目の前で鑑賞できたことは感動的でした。美術館にあまり興味がなかった私ですが、芸術に触れる時間を通じて、教養を深めることができたと感じています。

今回の留学を通じて、手術手技だけでなく、文化・価値観・働き方にも触れ、視野を広げることができました。こうした経験をさせていただけたことに、心より感謝申し上げます。

最後になりましたが、このような貴重な機会をくださった平野教授、野路先生をはじめ、スタッフ・病棟医の先生方、また、現地で丁寧にご指導いただいたIsala HPBセンターの先生方、本当にありがとうございました。

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