海外留学者からの手紙

カロリンスカ研究所(スウェーデン)

カロリンスカ研究所での短期研修を終えて

87期の河合典子です。
初期臨床研修2年と外科医としての2年を市中の関連病院で過ごし、卒後5年目にあたる平成27年の4月より大学で勤務させていただいており、現在は外科病棟、麻酔科、ICUなどのローテーション中です。 この度、平成27年10月に3週間という期間でスウェーデンの首都、ストックホルムにあるカロリンスカ研究所の大学病院で短期の研修に行かせていただきました。時期が遅くなってしまいましたがご報告させていただきます。 私の学年で、今回のように海外研修に行かせていただくことは珍しいことでしたが、きっかけは海外からの手紙にも記事を書かれている野路先生より「海外に興味あるんだって?」のお言葉からでした。医師になる前からいつかは留学も...と心に秘めつつ、医師になってからは特に英語の必要性は感じていた一方で、日々の業務に追われ、なかなか語学の勉強は進んでいないのが現状でした。突然のチャンスに戸惑いはありましたが、正式にストックホルムのカロリンスカ研究所の受け入れ許可を出していただき、10月1日に日本を出国しました。ストックホルムは札幌よりもやや寒く、5〜10度程度の気温差がありましたが、滞在中は天気にも恵まれ、非常に綺麗な街並みの中で過ごすことができました。

今回私は、カロリンスカ研究所の上部消化管外科の見学をさせていただきました。カロリンスカ研究所はSolnaとHuddinngeの2カ所に病院があり、消化器外科に関しては下部消化管外科がSolnaの病院、上部消化管外科はHuddinngeの病院というように分かれています。さらに上部消化管外科は膵臓、肝臓、食道・胃、内視鏡(ERCPなどを担当)の4つにグループに分かれており、私は主にMarco Del Chiaro准教授が率いる膵臓グループを見学しました。非常に多国籍な医局でしたが、カンファレンス、病棟、外来、手術もスウェーデン語でしたので、基本的には手術を主体として見学させていただきました。とにかく驚いたことは、手術件数の多さです。スウェーデンでは疾患によりますがセンター化がされており、膵臓疾患に限っても非常にたくさんの症例がカロリンスカ研究所に集まります。年間180−200件という膨大な数の膵切除を、4人のスタッフと外科レジデントを中心に行い、術前化学療法や拡大手術も積極的に取り入れ、スウェーデンだけではなくヨーロッパで中心的な立場であることが伺えました。スウェーデンでは手術参加への制約は厳しくなく、実際に手洗いをして手術に参加することが許されましたので、この3週間、毎日手術室に行き、時に第1助手として手術に参加する日々を過ごしました。毎日の症例は違うものの、膵臓外科に特化した同様の内容の手術を、毎日、時に1日3件と繰り返し見ることは、非常に勉強になり、刺激的でした。恥ずかしながら、初日から英語の壁を痛感し、人と話すことがどんどん怖くなってしまったのが正直なところではありましたが、手術室では解剖、手術操作など共通の認識もたくさんあり、充実した時間を過ごせました。また、私と同学年相当の外科レジデントも多数おり、彼らが今の自分と同じようなことに悩み、苦労しながら頑張っている姿は今後の外科研修への大きなモチベーションになりました。

今回、英語が苦手な私が、5年目という外科研修の期間に3週間という短期間で海外の病院見学に行ったことで、目に見える形で何か身につけられたかというと、正直なところ分かりません。ただ、日本の技術の丁寧さ・高さを感じるとともに、医学に関しての共通の認識を、語学が弊害となって深められないことに悔しさを毎日感じ、過ごした経験は、今まで海外への憧れを秘めていただけの私にとって、とても貴重な経験になったと思っています。 この経験を忘れず、これからも外科医として精進したいと思います。
このような機会を与えていただき、ありがとうございました。

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