診療グループのご案内【胆膵グループ】

胆膵グループの診療活動

担当医
平野 聡
土川 貴裕
中村 透
野路 武寛
浅野 賢道
中西 喜嗣
松井 あや
田中 公貴

胆膵グループでは十二指腸乳頭部、肝内・肝外胆管、胆嚢などの胆道と膵臓に発生する悪性疾患(がん)・良悪境界腫瘍、良性腫瘍の外科治療を担当しています。

特に胆道・膵臓のがんは手術が唯一の根治療法ですが、この領域は解剖学的な構造や病態が複雑であり、その診断と治療には高度な知識と熟達した技術を伴う手術が必要となります。

診断時に既に遠隔転移をきたしていることや局所で高度に進行していることがしばしばあり、その場合は切除不能と診断され、抗がん剤治療等の非手術療法が行われます。しかしながら、他施設で切除不能と診断されるような高度進行がんであっても、遠隔転移をきたしていない場合には切除可能なこともあります。このような患者さんに対して、私たちはわずかな可能性を求めて切除可能となる術式の工夫や新たな術式を開発してきました。また最近は、一旦、手術不能として抗がん剤治療を始めた場合でも、長い間がんが進行しない患者さんがみられるようになりました。そのような場合には積極的に手術を行うことで、抗がん剤を続けるよりも長期間の生存が得られることがわかってきました。手術が困難と言われても、 私たちはその結果を、国内外に新たな情報として発信し、この領域の外科治療をリードする施設になっています。

乳がん、胃がん、大腸がんなどの治療成績は、専門施設でも一般の市中病院でも大きな差はありません。しかし、胆道がんや膵臓がんの手術のような難易度の高い手術の治療成績は施設によって大きく異なり、手術症例数の多い施設ほど治療成績が良好であることが明らかになってきています。

胆道や膵臓のがんと診断された場合はもちろんのこと、高度に進行しているために切除不能と診断されても、すぐにはあきらめずに、一度我々にご相談ください。全国から患者さんが札幌の地を訪れています。

代表的な疾患について

胆道がん

肝臓の働きの一つに胆汁を作る、という機能があります。胆汁には脂肪の消化を助ける働きがありますが、作られた胆汁は肝内に網の目のように張り巡らされている胆管に分泌され、最終的に総胆管に集められ十二指腸乳頭部から十二指腸に分泌されます。胆嚢は胆汁を一時的に貯めておく“袋”で胆嚢管を介して総胆管と繋がっています(図)。

胆道がんは胆汁の通り道(=胆道)にできるがんの総称で、肝内胆管がん、肝門部胆管がん、 中部・下部胆管がん、十二指腸乳頭部がん、胆嚢がんなどがあります。かつては膵がんと同様に極めて治療成績不良のがんでしたが、診断・治療法の進歩でかなり改善されてきています。 中部・下部胆管がん、十二指腸乳頭部がんに対しては膵頭十二指腸切除術を、肝内胆管がん、肝門部胆管がん、進行胆嚢がんに対しては肝切除を伴う胆管切除を行い、高い切除率と生存率を得ています。中でも、肝内胆管がん、肝門部胆管がん、進行胆嚢がんに対しては積極的に血管の合併切除を行い高い治癒切除率(顕微鏡的にがん遺残のない手術の率)を得ています。特に肝動脈浸潤例で切除後の再建が困難な症例に対する動脈・門脈シャント術を開発し、通常は切除不能とされるがんでも手術が可能になることがあります。

最近では当初切除不能と診断され、化学療法で腫瘍サイズが縮小したり、サイズの変化が無かったものは積極的に根治切除を行っています。

膵臓がん

膵臓には主に、膵液を作ることと各種ホルモンを作るという働きがあります。膵液には炭水化物・タンパク質・脂肪を分解する消化酵素が含まれており、作られた膵液は膵内に網の目のように張り巡らされている膵管に分泌され、最終的に主膵管に集められ十二指腸乳頭部から十二指腸に分泌されます(図)。食物が十二指腸に流れ込んで来ると、膵液と胆汁が十二指腸内に分泌され、その後、小腸で食物は消化・吸収されます。膵臓がんの多くは膵管から発生するタイプのもので、膵管がんが正式な名称ですが、一般に膵がんと呼ばれます。一方、各種ホルモンは膵臓の内分泌細胞で作られ血管内に分泌されますが、その代表は血糖の調節に関わるインシュリンです。手術で膵臓の一部あるいは全てを失うことになると、術後に消化吸収機能が低下して下痢が増えたり、体重が減少したり、糖尿病になったりすることがあります。

膵臓がんは症状が出にくいため発見時に既に進行していることが多く、切除不能のことも多い悪性度の高いがんの一つです。そのような中で我々は積極的に血管合併切除再建を行いながら、治療成績の向上を図ってきました。特に局所進行膵体部がんに対し腹腔動脈合併尾側膵切除術(DP-CAR:distal pancreatectomy with en-bloc celiac axis resection)を世界に先駆けて導入し、良好な治療成績を得ています。

また、当初切除不能と診断され、化学療法後に効果(縮小または不変)があった例に対し血管合併切除を伴う根治手術を積極的に施行し、良好な成績を得ています。その症例数は国内で有数であります。

縮小手術と低侵襲手術

悪性疾患に対しては他の臓器を合併切する拡大手術をおこなっていますが、一方で良性疾患や良悪性境界領域の疾患に対しては、可能な限り身体に優しい手術を行っています。対象となる疾患は膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)、膵粘液性嚢胞腫瘍(MCN)、膵神経内分泌腫瘍、膵SPN(solid-pseudopapillary neoplasm)等です。

縮小手術は病変部以外の臓器(膵臓・胆管・肝臓など)を可能な限り残して、生体に負担をかけない(臓器欠損を少なくする)手術です。

十二指腸胆道温存膵頭部切除術が含まれます。本術式は膵実質のみを切除し、胆管と十二指腸を温存します。膵頭十二指腸切除を行った場合と比較し、術後の生活の質(QOL)において優れた術式でありますが、技術を要する術式であります。我々は全国でも数少ない本術式を行っている施設であります。

低侵襲手術の代表は腹腔鏡下手術ですが、近年、胆嚢摘出術以外の胆道・膵臓疾患にも腹腔鏡下手術が導入され、当科においても胆管切除術、膵部分切除術、尾側膵切除術、脾温存尾側膵切除術、脾摘術を行っています。出血量も少なく小さな傷で患者さんの体への負担は少なく、今後も徐々に適応を拡大していく予定です。

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