第11回北海道Acute Care Academy開催報告
2025.07.08
本年で第11回となりました北海道Acute Care Academyですが、2025年6月28日土曜日に爽やかな初夏の好天の元、TKPガーデンシティPREMIUM札幌大通にて、現地参加21名、オンライン参加20名、合計41名にご参加いただき、開催させていただきました。
一般演題は北海道消化器科病院 外科 佐藤 大介 先生、当教室 高野 博信 先生にご司会いただき、5題の症例を検討させていただきました。
まず、札幌東徳洲会病院 救急集中治療 兼 画像・IVRセンター 松田 律史 先生より、『Hybrid ERでの初療が迅速な根本治療に結び付いた消化管出血の1例』のご報告をいただきました。松田先生は急遽出張が入り、出張先に向かう途中の京都駅の個室型ワークブースからご参加いただきました。本当にありがとうございました。心停止をきたした消化管出血、これをどのような戦略を持って救命するのか。ハイブリッドER、そして救急、外科、IVRと素晴らしいチームをもってしても難しい症例の次の救命を考えるための貴重な症例検討となりました。
次に、手稲渓仁会病院 臨床研修部 小山 諒人 先生より、『「劇的救命」しえた小児気管完全断裂の一例』のご報告をいただきました。気管そして気管支が断裂している症例が何故助かったのか。各分野のエキスパートが即時に終結し、最高のパフォーマンスを集中させて起こした奇跡的な症例。脊髄損傷をも克服し、縄跳びをするまで回復した患児のビデオに感涙した参加者も多かったと思います。
3題目には、旭川赤十字病院 林 杏香 先生より、『膵尾部癌結腸穿破による出血性ショックに対して緊急手術を施行し救命し得た1例』をいただきました。癌が周辺臓器に浸潤すること、感染の原因になること、そして出血の原因となることについては外科医なら誰もが理解しております。このようなOncologic Emergency症例の手術は非常に難しく、外科医の腕の魅せ所でもあります。本症例は切除可能性が低そうな、しかし切除不能は失血死を意味する困難症例において、適切な手術で救命を得る事ができた、素晴らしい症例でした。
4題目は帯広厚生病院 外科 郷 雅 先生より、『肝細胞癌に対して左3区域切除術後、難治性十二指腸出血に対して緊急手術を要した一例』をいただきました。高度侵襲手術のSurgical Critical Careは、その管理、そして適時な侵襲的治療への移行判断が肝となります。しかし稀な経過をたどることも少なくなく、経験しないと対応が難しいケースも多々あると考えられます。本症例のディスカッションの盛り上がりは、その稀な経過を共有する事ができたことにより、参加者全員が次に発生する同様の症例に対処できるという確信に繋がりました。
そして最後に、市立釧路総合病院 外科 城崎 友秀 先生より、『集学的治療により救命し得た牛外傷による腹腔内多臓器損傷の1例』をいただきました。市立釧路総合病院からは毎年「熊」や「戦車」など「重量物」による高エネルギー外傷症例をご提示いただいておりますが、本年は「牛」という事で、これまでより重症度は低いのではと考えてしまいました。しかし予想に反し、上腹部の多くの臓器が「破裂」するように損傷しており、驚愕させられました。見事に救命された1例でしたが、ディスカッションでは本症例をさらに確実に救命するための評価法などが提示されるなど、今後に繋がる有意義な情報共有が成されました。
なお注目のブラックジャック賞は、小児の劇的救命例をご提示いただきました、手稲渓仁会病院 小山先生が受賞されました。小山先生、おめでとうございます。今後我々と共に、教室のAcute Care Surgeryを担っていただけると期待しております。
本年のレクチャーは、手稲渓仁会病院 消化器外科 加藤 健太郎 先生の司会で、市立釧路総合病院消化器外科 佐藤 暢人 先生より『DIC治療におけるリコモジュリンの有用性について』をいただきました。イラストを多用した非常にわかりやすいスライドで凝固系を解説していただき、DICに何故リコモジュリンが効くのかを我々も理解出来ました。佐藤先生、本当にありがとうございました。
そして特別演題は、当教室 平野 聡 教授の司会で、東京科学大学大学院医歯学総合研究科救急医学分野 教授 森下 幸治 先生より、『Acute Care Surgeonが知っておきたい蘇生の話し』をいただきました。Surgical Critical Careの話を中心に、Damage Control Resuscitation (DCR)、Massive Transfusion Protocol (MTP) 、日本と欧米における輸血の単位の違い、凝固系の理解、REBOAやチーム蘇生など、一般外科医が知ってそうであまり理解していない基本的な事項を中心に丁寧にご解説いただきました。森下先生、本当にありがとうございました。
最後になりましたが、本会を支えていただいております、旭化成ファーマ株式会社、そしてNPO法人北海道外科支援機構に感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。今後とも何卒よろしくお願いいたします。
特別演題 : 『Acute Care Surgeonが知っておきたい蘇生の話し』
東京理科大学 森下教授

ブラックジャック賞
手稲渓仁会病院 臨床研修部 小山 諒人 先生『「劇的救命」しえた小児気管完全断裂の一例』
