臨床研究について

臨床研究について

より良い医療の創造のための臨床研究ならびに基礎研究からなる医学研究の実践は、安心した生活を過ごすための地域医療への貢献、医学教育と高度な技術をもつ外科医師の養成と並ぶ大学病院・医学部の使命です。

とくに臨床研究は患者さんの新しい医療の創造へのご理解とご協力があって初めて成り立ちます。

臨床研究とは

患者さんのご協力を頂き、病気の原因の解明、病気の予防法や診断法の確立、手術や薬剤などによる治療の改善、患者さんの生活の質の向上などを目的に行う医学研究のことを臨床研究と言います。

臨床研究には、過去のデータをまとめて新しい治療に役立てるための研究の他に、よりよい診断や治療法の確立のために医学的なデータを得るさまざまな臨床試験(自主臨床試験)があります。特に、新しい薬や医療機器が国の承認を得て一般の診療で使えるように客観的なデータを集める臨床研究は「治験」と呼びます。

これらの臨床研究よって得られた知見は、学会や専門雑誌への発表を通じて、医学の進歩に役立ちます。

現在当科で実施している臨床研究

  • 1.「根治切除術後食道癌のNY-ESO-1抗原発現陽性例に対するIMF-001の多施設共同無作為化比較試験(第Ⅱ相臨床試験)」

    臨床研究
    登録状況
    責任研究者
    三重大学大学院医学系研究科がんワクチン治療学 珠玖洋 http://www.shikuken.jp
    対象
    切除可能食道癌
    治験の種類
    医師主導治験、第Ⅱ相臨床試験
    概要
    切除可能の進行食道癌の標準治療は手術前の抗癌剤治療と手術治療ですが、手術でがんが完全に切除された後にも約半数の方で食道癌が再発するといわれています。しかし、手術後の再発を抑制する治療法は現在確立されていません。本研究では、全国の施設が協力して「がんワクチン」によって食道癌の手術後の再発を抑える効果があるかを確認します。
    臨床試験では、治療開始前に食道癌の細胞が特定の癌抗原であるNY-ESO-1を持っているかどうかを調べます。つぎに癌細胞がNY-ESO-1を持っていることが確認された方に対して、NY-ESO-1に対する「がんワクチン」を使うグループと、ワクチンを使わない標準治療のグループのいずれかに参加していただき(無作為に1対1の割合で割り振られます)、NY-ESO-1のワクチン治療が食道癌の手術後の再発を抑制するかどうかを調べます。
  • 2.「大腸癌腹腔鏡下手術における成分栄養剤(エレンタール配合内用剤)を用いた周術期栄養管理が術後回復に与える影響についての多施設共同研究(EPLAS)」

    臨床研究
    登録状況
    責任研究者
    北大消化器外科Ⅱ 七戸俊明
    対象
    大腸癌腹腔鏡下手術
    治験の種類
    医師主導治験、第Ⅱ相臨床試験
    概要
    従来より消化器がんの手術時には腸内容が空虚であることが望ましいとされ、下剤による手術前の準備と手術前後の数日間の絶食がなされてきました。一方で、欧州からは手術前後(周術期)の絶食期間をより短かくすることにより、手術後の合併症を減らし入院期間を短縮できる可能性があることが報告されています。
    本研究では、北海道内の北海道大学消化器外科Ⅱの関連病院と共同で、手術前後に成分栄養剤を飲むことにより、空腹感や口渇感などのストレスを減らし、手術後の回復を早めるかどうかを調べます。手術前後に成分栄養剤を飲まない標準治療のグループと成分栄養剤を飲むグループのいずれかに参加していただき(無作為に1対1の割合で割り振られます)、周術期の栄養管理が手術後の回復に与える影響を調べます。
  • 3.「胆道再建手術症例における術前胆汁培養結果に基づいた周術期抗生剤投与の有用性に関する無作為化比較臨床試験」

    臨床研究
    登録状況
    責任研究者
    北大消化器外科Ⅱ  平野 聡
    対象
    手術前に胆汁採取が可能な肝胆膵疾患
    治験の種類
    医師主導治験、第Ⅱ相臨床試験
    概要
    手術に際しては、創などの手術部位の細菌感染の予防のために抗生剤を投与しますが、しばしば感染を来します。本研究では、手術時に胆道切除・再建術を伴う肝胆膵の手術を予定しており、術前に胆汁採取による細菌検査が可能な方に対して、細菌検査の結果に基づく抗生剤使用によって手術部位の感染を減らすことができるかどうかを調べます。従来から行われている抗生剤の投与法を用いる標準治療のグループと、細菌培養の結果に基いて抗生剤の種類を決めるグループのいずれかに参加していただき(無作為に1対1の割合で割り振られます)、術後の創感染と腹腔内感染の発生率の差を調べます。
  • 4.「StageⅢ結腸癌(直腸S状部癌を含む)R0切除後の術後補助化学療法としてのオキサリプラチン併用療法の多施設共同第Ⅱ相臨床試験」

    臨床研究
    登録状況
    責任研究者
    北海道大学腫瘍センター 小松嘉人
    対象
    ステージⅢ結腸癌、治験の種類:医師主導治験、第Ⅱ相臨床試験
    概要
    ステージⅢの結腸癌(大腸癌)の手術後に行う再発予防を目的とした抗がん剤治療(補助化学療法)の効果を確認する臨床試験です。日本では結腸癌手術後の再発予防を目的に主に経口抗がん剤(フッ化ピリミジン系抗がん剤など)が治療薬として用いられて来ましたが、欧米では複数の抗がん剤(5-FU、ロイコボリン、オキサリプラチンなど)を合わせた点滴治療(FOLFOX療法など)の効果が示されています。本研究では、北海道内の施設が協力して日本ではまだ明らかではない点滴抗がん剤による手術後の再発予防効果を調べます。

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