海外留学者からの手紙

Academic Medical Center(オランダ)

留学体験記

89期の宮坂衛と申します。今回、2017年12月に2週間、オランダ・アムステルダムのAcademic medical center (AMC)という施設に研修に行かせていただきましたのでご報告します。

元々、先輩方が海外短期研修に行かれた際の話を聞き、研修への漠然とした興味を抱いておりました。そんな中、5年目を迎える際に医局から「国内外の施設に短期研修をしませんか?」というお誘いがあり、「海外の病院を見る機会なんて中々ない、ぜひ行ってみたい!」...と希望しました。勢いで希望したものの各施設の違いもよく分からず、恥ずかしながらAMCには勧められるままに行く事になりました。AMCには以前に野路先生が1日訪問はされておりましたが、その他に消化器外科Ⅱの先生は行っておらず、自分の英語力の低さで医局の印象が悪くなったらどうしよう...とか、そもそも先方からのメールが1ヶ月以上返って来ないけど大丈夫か?とか、諸々不安を抱えつつ12月を迎えました。

 私が行ったオランダの首都アムステルダムは、街中の運河が綺麗で、風車や美術館、サッカースタジアムなど観光スポットも多々あります(チューリップなどの季節はもっと素晴らしいと思います。)街の方々も気さくに英語で話してくださるので、旅行だけでもお勧めしたい素敵な街です。(人々の背の高さには驚かされますが...。)そのアムステルダムにあるAMCは、オランダに8つある大学医療センターの1つで、日本でいう東京大学のような所です。外科は肝胆膵・上下部消化管・胸部・救急(外傷)の大外科で構成されており、様々な手術が行われています。病棟管理などはチーム毎ですが、朝は全員で集まって昨日の手術・救急症例のカンファレンスをしており、救急チームは創外固定など整形外科的な手術も行っておりました。自分は肝胆膵チームのvan Gulick教授(専門:肝臓・胆道外科)に受け入れて頂き、主に肝胆膵の手術を中心に見学させていただきました。PDや肝切、Lap-肝切除やLap-DP、Lap-Cに至るまで非常に多岐に渡る手術を見ることが出来ました。また、肝胆膵の手術日以外には食道癌の手術を見たり、Lap-PDのトレーニングに参加させて頂いたりもしました。オランダ語のカンファレンスや患者さんとの回診時の会話は正直わかりませんでしたが、オランダの方々は皆さん英語が非常に流暢で、英語のカンファレンスはもちろん、術中も看護師さんも含め英語で優しく話して頂けたので、全く話が分からなくて困るという事はありませんでした。(自分の英語力の問題で、聞き取れない事はありましたが...。)手術は当科と同じ術式でもリンパ節郭清・再建・ドレーンの数や術後管理など様々な違いがあり、術者はもちろん、施設・国の違いなど色々と要素はあると思いますが、非常に驚きも多かったです。

中でも貴重な財産となったのは、AMCや他国から研修に来ている若手の先生方と出会えた事です。各国の手術・周術期管理・Surgical Trainingの違いから、保険制度・社会事情等を話し、彼らの『一人前の外科医になる』事へのモチベーションの高さを感じました。また、今回北大とAMCとの共同研究の件も連絡係?として少し話に行ったのですが、AMCでその研究の中心となるのが私より若く多数の論文も手掛ける先生である事を知り、優秀な先生方から大変刺激を受けました。他国の外科医と、若手同士の悩みを共有し、それ以外にも各国の文化の話や、個人的な話までして友人となり(週末には一緒に観光もして)、短期間の滞在でしたが自分の人生において大きな経験となりました。

 今回、わずかな期間ではありましたが海外の施設で研修させて頂き、もちろん手術技術が上がったわけでも、英語がすぐに身に着いたわけでもありません。しかし、改めて日本を離れて自分の施設の手術や国の医療システム・または人柄や文化等々日本の良い所・悪い所を感じる事が出来ました。『自分の中での常識』に捕らわれず「じゃあ普段やっている事は、日本の他施設ならどうか?世界的にはどうか?」と考えらえる視点が広がったと思います。またそういう最新の世界的な変化を論文・学会等で吸収するため、世界の先生と交流するためにも、英語の重要性は強く感じました。この貴重な経験を、若い年次でさせて頂いたのは本当に良かったと思います。機会を与えてくださった、平野教授、野路先生を始めとする医局の諸先生方、本当にありがとうございました。この経験を生かして、今後の日々の診療・学習に取り組んで行き、外科医として成長したいと思います。

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