教授からご挨拶

豊富な人材により科学研究に根ざした革新的外科治療を行います。世界を代表するサージカルチームを形成し、外科学の歴史を創ります。

北海道大学教授 医学博士/大学院医学院・医学研究院 消化器外科学教室Ⅱ教授/北海道大学病院消化器外科Ⅱ科長 平野 聡(ひらの さとし)

人が集まり、皆が上手くなる

私たちの使命

私たちは主に外科手術というとても物騒な手段を使って病気の治療を行っています。すなわち人の体にメスを入れるという事ですが、それ自体、本来、相当な痛みを伴うものです。なぜ我々外科医がこの苦痛をともなう、なおかつ決して楽ではない手段にこだわるのかーその答えは「メス(手術)の持つ力」に対する絶大なる信頼と憧れです。外科手術は病気を根本から取り除くことはもちろんです。しかもそれと同時に、病と闘う患者さんの畏れや苦悩、あきらめまでを一気に、こともなげに解消してしまう、そんな力をもっているのです。

この外科手術が最大限に力を発揮できる敵が私たちのごく身近に存在し、その勢いはとどまることを知りません。

もう、おわかりでしょう。相手は「がん」という大変やっかいな敵です。消化器外科の守備範囲はその名の通り、食物の通過経路である消化管とそれに付随する臓器でありますが、その消化器に発生するがんの中でも特に私たちは食道がん・胃がん・胆道がん・膵臓がんといった、いわゆる "難治癌" と呼ばれるものほとんどを敵にまわしています。これらの難敵に常に向き合い、いかに完全に、そして安全に、なおかつ患者さんの負担を最少限にしつつ取り除けるかという課題に、日々心血を注いでいます。

消化器の病気の中には、難治がんに代表される手術が大がかりで難しいものから、比較的シンプルな手術で良くなるものまで、はたまた、交通事故による外傷のように全く予測のつかないものなど、実に様々なものがあります。私たちの教室と連携している医療機関が全道に34施設ありますが、そこでの手術の多くはそれほど大がかりでないものの、常に最高水準を求められるものばかりです。また、ほとんどの施設が地域の救急医療を支え、命と隣り合わせの医療を日夜行っています。私たちはこれらの関連施設と常に情報と技術を交換し、道内各地で難治癌に悩む患者さんから、突然、外傷を負ってしまった患者さんまで、手術を必要とするすべての患者さんに常にトップレベルの治療を提供できるようにする事こそが、外科医としてメスを握る私たちの最大の使命であると考えています。

人を育てる

外科の治療手段である手術は近年大きく変化を遂げました。例えば内視鏡手術と呼ばれるものは、大きな傷の代わりに体に小さい穴をあけてそこから専用のカメラや手術器具を入れて病巣を切除するというものです。このような手術は患者さんの体の負担を少なくする効果はてきめんであり、世界的に急速に普及していますが、まだ発展途上で、しっかりした手術として確立していないものも多くあります。そういった未解決の分野をいち早く解決し、新たな治療法として世の中に普及させる事も私たちの大きなテーマの一つです。

このような一見新しい分野のように思える仕事でも、もとをただせば長い歴史の中で多くの先輩外科医たちが築き上げ蓄えてきた技術と知識に、私たちの時代に即したもの、あるいは新しくわかった事柄をわずかずつ積み上げていく、まるで機を織るような地道な仕事です。このゆっくりとした、しかし着実な進歩の歴史を「つなぐ」立役者は一人一人の輝く外科医であり、多くの若き仲間達なのです。

私たちは外科医として「つなぐ」ことの大切さを十分知っていますから、医学生や研修医に対する教育に全国のどこにも引けを取らない精一杯の情熱を傾けます。外科医はこれまで自らの技術に関して戦略的にトレーニングする事、すなわち「うまくなる」ために努力と工夫をすることにやや無頓着でした。しかし、考えを改める時が来ました。我々の目標である難治癌の新しい手術方法を達成するために、また、最新の内視鏡手術を開発するために、さらに我々のこれまでの歴史を「つなぐ」ためには多くの人材が、一定期間で、一定レベルの外科技術を習得できるようなトレーニング法とその理論が必要です。そのための一つの研究課題として「外科教育学」という新たな分野に対し教室をあげて積極的に取り組んで行きます。

サージカルチームの重要性

医師が大学を中心に集まることに関して、昨今、かなりネガティブなイメージとして捉えられることが多々あります。しかし、次世代を託せる人材を育成するため、なおかつ広い北海道という土地で、全道各地に住んでいる方々に同じ技術的恩恵を受けていただくことができるのは、大学教室が医師の集合体として存在し、医師の数と医療のレベルを一定以上に確保してきたからにほかなりません。各医療機関や研究機関との連携、最新の治療や技術に関する情報の共有、人材の適材適所の配置などからして、もはや大学教室はネガティブな集団であり得ないのです。今後、どんどん増えていくであろう女性外科医に対しても、大学という大きな後ろ盾があればこそ、行き届いたlife work balanceを提供することができるのも強みの一つであります。

外科医はどんなエキスパートでも一人では極めて無力であり、チームを形成することで初めて満足な外科診療ができます。逆に、それほどエキスパートぞろいの集団でなくても、大勢で集まり全員が同じ目標に向かって動いたとき、実に大きな力を発揮することができます。これが私たちの目指すサージカルチームです。新しい治療法の開発、外科医として一定のレベルを最短で身につけるための理論と実践、地域を含めた高いレベルの外科治療の提供―私たちが優れた外科医の集団=サージカルチームとして成し遂げようとしている事すべてに多くの人材が必要です。そこにはもう、教室という単位を忘れた外科医療そのものの探究者の集団かもしれません。私たちのサージカルチームの構成員がもつべきと考える共通のCORE VALUE(基本理念)として、次の3つを挙げたいと思います。

Our Credo(信条)

  • 全てに対して情熱的であれ
  • 全ての患者に家族と同等の愛情を注ぎ続けよ
  • 全ての物事に勇気をもってあたれ

Our Mission(使命)

基礎・臨床研究を基盤にした外科医療改革によって患者の最大幸福に寄与する

The mission of The Department of Gastroenterological SurgeryⅡ,Hokkaido University is to bring the greatest happiness to patients with disease or physical handicap by achieving courageous innovation of the surgical therapy based on the outstanding basic or clinical research.

  • 外科治療を組み込んだ難治癌に対する総合的治療法の確立
  • 革新的低侵襲外科治療法の開発と普及
  • 学生(卒前)・研修医(卒後)教育を通した人材育成
  • 積極的外科トレーニングの導入によるサージカルチームとしての技術力向上

Our Vision(展望)

豊富な人材により科学研究に根ざした革新的外科治療を行い、世界を代表するサージカルチームを形成し、外科学の歴史を創る。

We shall be the premier surgical team in theworld,based on the resourcefulness and the scientific research.
We are making "The History of Surgery"

この信条をこころに使命を全うし、展望を目指します。そして、私たちが目指すのは世界に冠たる外科医集団で、創造することができるチームです。理想のサージカルチームでともに成長し、新しい外科学を創っていくことのできる仲間が私たちのもとに集うことを信じています。

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