研究グループ紹介【胆膵グループ】

胆道グループ

胆道癌治療成績の向上を目指して

研究課題
1.胆道癌における至適な患者選択と術式選択に関する研究
2.胆道癌手術治療に組み合わせる補助療法の研究
3.胆道癌特有の進展様式解明のための研究

臨床研究

胆道癌は根治切除手術のみが治癒しうる治療手段でありますが、その適応となる割合は高くはなく、また根治切除できても5年生存率は満足できるものではありません。胆道癌の中でも肝門部胆道悪性腫瘍(肝門部胆道癌、肝門へ浸潤する胆嚢癌や肝内胆管癌など)は診断・治療ともに容易な症例は少なく、根治切除に至るまでには高度な知識と熟達した技能が要求され、一例ごとに創意工夫を重ねて最良と思われる結果が得られるよう努力しているのが実情であります。その一方で、他臓器の癌とは異なり、胆道癌診療ではレベルの高いエビデンス(確実な科学的根拠)は極めて少ないため、手術適応や手術術式には施設間格差が大きいという特徴があります。
教室では胆道癌に対し遠隔転移がない限り根治切除の可能性を追求してきました。肝門部胆道悪性腫瘍に対しても大量肝切除を伴う胆管切除術も大がかりな手術ですが、それに加えて膵頭十二指腸切除や肝動脈・門脈合併切除再建術を併施するような積極的な手術を行っています。しかし、他の消化器手術と比べ合併症率は高く、死亡率も決して低くはありません。

胆道グループでは胆道癌に対する手術療法の合併症や死亡率をいかに減らすか(安全性)ということや、5年生存率をいかに上げるか(有効性)について「研究課題」に示した如く様々な角度から研究を行っております。
「胆の道(胆道外科医としての道のり)」は決して楽ではありませんが、これからどんどん新しい事実を発見したり、新しい手法を見つけていかなければならない分野です。闘う相手に不足はなく、最高にやり甲斐のある領域です。

基礎研究、橋渡し研究( Translational research 

胆道癌を治癒せしめる唯一の治療は手術療法ではありますが、手術単独での治療には限界があることも確かです。化学療法、免疫療法、遺伝子治療等が進歩し、これらを手術と組み合わせて行う集学的治療が期待されます。
しかし、胆道癌は他臓器癌と比較して、まだ基礎研究が十分進んでいない分野の一つです。すなわち疾患そのものの成り立ち、発育形態、性質などの研究がまだまだ必要で、今も盛んに行われています。これらの基礎的研究から、新たな手術の方法や、化学療法などの開発に結びつく成果が得られることが期待されます。

これまで胆道グループではリンパ節転移診断や癌の浸潤・転移に関わる基礎研究や、新規治療法に結びつく研究を進めています。


近年、癌の進展・浸潤メカニズムにEMT(epithelial-mesenchymal transition)という概念が提唱されています。

癌細胞は粘膜の表面にある上皮細胞(epithelial cell)から発生しますが、粘膜の下の間質という部分にしみ込むことを浸潤といいます。間質に浸潤した癌細胞は、血管やリンパ管に入り込んで他の臓器に転移を起こしたり、周囲に散らばったりします。
EMTとは、癌細胞が発生母地である上皮細胞の性質から、浸潤先の間質細胞(mesenchymal cell)の性質に移行(transition)することによって浸潤する能力を得るとする概念です。

教室ではこれまでの多数の切除検体を用いてEMT関連タンパク質を解析し、その意義を明らかにする研究を行っています。


肝門部胆管癌の根治術においては、病変部を含む広範囲肝切除が標準術式となりますが、術後の肝不全という状態は死亡につながる大きな合併症の一つです。

術後の肝不全を予防するために、術前に門脈塞栓術という切除する側のサイズを小さくする工夫を行ったりしていますが、まだ十分とはいえません。今後、術後肝不全を克服するための新たな取り組みとして、幹細胞(色々な細胞のもとになる細胞)を注入して効率的な残肝の肥大を目指した基礎研究を進めています。

膵グループ

膵癌の治療成績向上を目指して

研究課題
1.膵液瘻ゼロを目指した吻合法の研究
2.胃内容排出不全ゼロを目指した再建方法の研究
3.有効な補助化学療法の確立
4.新規膵癌治療法の開発

臨床研究

膵癌は難治性がんの代表で、手術単独では治療成績に限界があります。現在、抗がん剤や放射線治療、がんワクチン療法など、さまざまな治療方法を組み合わせた集学的治療が開発されてきています。近年、術後に補助療法(抗がん剤)を行うことで再発率が低下することが明らかとなってきました。したがって、術後早期に回復し、次の治療に一刻も早く進めるような、安全な手術を施行する必要があります。しかし、膵切除は、腹部手術の中で最も技術を要する手術の一つで、いまだに合併症も多く、死亡する場合もあります。

膵グループでは、手術を安全に施行し、術後合併症を減少させるため、膵臓と消化管の吻合に対する新しい術式の開発や、胃内容の排出遅延を予防する消化管の再建方法の導入を積極的に行っています。

最近、抗がん剤治療を手術の前に行い、再発予防効果を高める治療法が進められています。しかし、どの患者さんに、どの抗がん剤を、どの位の期間用いた場合に最大の効果が得られるのかは、いまだ不明です。このような問題点を明らかにするため、多施設共同臨床試験の準備をすすめています。全道で協力し、膵癌の治療成績向上へ向けた体制を構築するために、役立ちたいと考えています。

基礎研究、橋渡し研究( Translational research 

膵グループでは膵癌の新しい治療法の開発へ向けた基礎研究も行っています。

膵癌は特に肝臓へ転移しやすい性質があり、術後の肝転移再発を抑えることが、大きな課題の一つです。これまで、東京大学医科学研究所と共同研究で、膵癌細胞に特異的に発現する遺伝子を標的とした研究を行い、膵癌の転移を抑制する治療法の開発を行ってきました。今後、動物実験を用いた前臨床試験を開始する予定です。また、血中のがん細胞や、肝臓の中にすでに転移が始まったばかりの細胞を検出するなど、肝転移のメカニズムを解析し、新規治療法の開発へ向けて積極的に取り組んでいます。

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